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東北大学は1月11日、千葉奈津子氏(同大加齢医学研究所腫瘍生物学分野教授)、吉野優樹氏(同助教)らと、安井明氏(加齢ゲノム制御プロテオーム寄付研究部門教授(現加齢研フェロー))らによって、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因になる「BRCA1」の新しい結合分子『RACK1(Receptor for activated C kinase)』を同定したことを発表した。
同研究成果は、Oncogene誌(電子版)に、1月7日付けで公開された。
生まれつき「BRCA1」に変異を持つ人は、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群になる可能性が高いことが明らかになっている。
「BRCA1」は、BARD1と結合して複合体を形成し、DNA修復や中心体制御に関与する。
中心体は、細胞分裂期に染色体を均等に娘細胞に分配するための紡錘体の極として働く重要な細胞内小器官で、その機能の異常は発がんにつながると考えられている。
同研究グループは、これまでの研究で、BARD1に結合する分子「OLA1(Obg-like ATPase 1)」を同定し、「OLA1」はBRCA1、BARD1とともに、中心体の複製に関与し、「BRCA1」のがん抑制機能に重要であることを明らかにしてきた。
さらに、今回の研究では、OLA1結合分子として、『RACK1』を同定した。
『RACK1』は、細胞周期を通じて中心体に局在しており、「OLA1」に加えて、BRCA1、BARD1、γ-tubulin(中心体を構成する)などと結合した。
『RACK1』の発現量が不足すると、「BRCA1」の中心体局在は異常になり、中心体の複製が抑制された。
逆に、『RACK1』の発現量が過剰になると、「BRCA1」の中心体局在は増強した。(このとき、乳腺由来の細胞では、中心体の複製が亢進、中心体の数が異常に増加する現象が見られた。)
また、がんで認められた変異から、BRCA1-RACK1の結合力が落ちるBRCA1変異とRACK1変異を同定した。
これらの変異体は、「BRCA1」の中心体局在の制御や中心体複製の制御に異常をきたすことを明らかにした。さらに、乳腺由来細胞は、他の組織由来の細胞に比べ、中心体複製のタイミングが早まっている可能性を示す形態的な特徴をもつことが判明した。
このことは、「BRCA1」の異常による乳がん発症理由のひとつであると研究グループは考察している。
これらの結果から、『RACK1』は、BRCA1-RACK1の結合を介して、「BRCA1」の中心体局在を制御し、中心体の複製を制御することが明らかになった。
また、その異常が、特に乳がんの発症に関与する可能性が示唆された。
本研究成果は、中心体の機能を調節することにより、遺伝性乳がんに加えて、一般の乳がんの発症も抑えられる可能性があることを示した。
さらに新しいがんの治療法開発にも貢献することが期待される。
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