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近年では、人体の一部を再現する「生体組織チップ」の開発が盛んに進められている。その対象は肺や肝臓、腸などが中心となっており、生体組織チップを活用した創薬研究などが行われている。
一方で、「眼」を対象とした生体組織チップ研究についてはほとんど行われていなかった。
東北大学では6月13日、梶弘和氏(同大大学院工学研究科准教授)、阿部俊明氏(同医学系研究科教授)らが共同で、失明に繋がる網膜疾患である『滲出型加齢黄斑変性』の病態の一部を生体組織チップ上で再現することに成功したと発表した。
同研究成果は、「Scientific Reports」(電子版)に掲載されている。
網膜疾患は加齢とともに発症するケースが多く、加齢によって網膜の中心部である黄斑に障害が生じる『加齢黄斑変性』もその一つだ。加齢黄斑変性は、失明原因にもなる疾患である一方で比較的最近まで効果的な治療法がなかったため、近年様々な治療法の開発が行われている。
すでに超高齢社会に突入している国内では、このような視機能障害への対策が喫緊に求められている。
一方で、現状の網膜疾患に対する医薬品候補化合物の評価としては、「疾患モデル動物」による評価が行われる。しかし、ヒトと動物の種差があることなどのために、そこで得られる結果の信頼性は必ずしも高くはなく、コスト面・倫理面でも課題が残っている。
今回、同研究グループでは、網膜の一番外側にある構造を模倣するように、生体組織チップ上でヒト由来の網膜の細胞・血管の細胞をそれぞれ培養。
次に、細胞がある程度成長してから、網膜の細胞において低血糖や低酸素の状態にした。そうすると、血管の細胞は網膜の細胞側に移動して、網膜の細胞が損傷することが分かったという。
この過程は、滲出型加齢黄斑変性の主要な病態である『新生血管』の発生を一部再現したものといえる。
従来の疾患モデル動物の代替として、このような生体組織チップによる病態解析や創薬スクリーニングなどに応用できる可能性がある。同研究グループによると、今回の研究成果をもとに血管内皮細胞の毛細血管網化や神経網膜の追加などを行うことにより、今後さらに生体機能に近い生体組織チップ開発も考えられるという。
また、各細胞を置換する形で患者iPS由来の成熟分化細胞を活用することでの患者ごとの治療法開発や創薬スクリーニングへの発展や、眼以外の他の臓器を模倣した生体組織チップとの接続での全身の薬物動態を検討できる可能性などもあるとしている。
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