日本人がん患者由来の『PDXライブラリー』の整備へ協業開始

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がん患者のがん組織を免疫不全マウスに移植することで、腫瘍を再現する技術である『PDX(patient–derived xenograft)』

このPDXは、患者のがん組織の特徴を保持することができるため、「抗がん剤開発」におけるパラダイムシフトを起こしている

例えば、従来の実験モデルでは、「5%程度」といわれていた治療効果の予測能だが、PDXモデルマウスの場合になると、「80%以上」になるという報告もある。

そのため、このPDXモデルマウスを利用することによって、臨床試験(ヒトへの新規抗がん剤の投与)の前段階に、薬剤の効果を予め確認できることが注目されている。

ヘルスケア事業を手掛ける株式会社LSIメディエンス(本社:東京都千代田区、伊藤昭夫社長)は2月21日、国立がん研究センター(東京都中央区)、医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市)と3者協働で、「がん医療推進のための日本人がん患者由来PDXライブラリー整備事業」を3月1日から開始することを発表した。

同事業は、日本医療研究開発機構(AMED)「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」の採択によるもの。

日本人がん患者由来の『PDX』の研究拠点を整備

LSIメディエンスは、厚生労働大臣の定める基準に適合するGLP(Good laboratory practice)施設を擁しており、PDXの取り扱い実績を持っている。

医薬基盤・健康・栄養研究所は、世界に先駆けて、「重度複合免疫不全マウス」を用いた多種多様なPDXの樹立に成功している。

国立がん研究センターは、2つの臨床研究中核病院と国内最大のがん専門研究所を擁する。

今回、この3者が協働して、世界最高水準の『日本人がん患者由来PDX(J-PDX)研究拠点』を整備し、さらに専門分野における人材育成を進めるとしている。

「日本人の特性」を加味した新薬開発、「希少がん」の創薬

今回開始する事業の目的は、「日本人の特性」を加味した効率的な新薬開発になっている。

日本人がん患者由来のPDXを産業活用できるよう、「5大がん」を中心とした詳細な臨床情報を付帯した高品質ライブラリーを構築・整備する。

また、臨床試験が困難とされる「希少がん」の創薬開発を目指し、「希少がんPDX」を含むライブラリーも構築するとしている。

高度ながん研究・がん医療への応用を推進

さらに、GLP施設内では、PDXを保存・管理することで、薬事承認基準に準拠した非臨床試験をPDXマウスで実施することが可能となるとしている。

医薬基盤・健康・栄養研究所は、製薬企業を支援し、新たな創薬標的の探索とシーズ創生を行い、J-PDX ライブラリーを用いる循環型研究開発を推進する

国がんは、同事業と並行して、国内外製薬企業と連携しながら、がん患者とPDXマウスの薬剤応答性データ等を突合・解析する「Co-Clinical Study」、希少がんの創薬研究を実施するとしており、高度ながん研究・がん医療への応用が進んでいる。

公開日 :2018.04.03 更新日 :2021.10.06

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