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近年、抗菌薬に対する耐性菌の問題が世界的に注目されている。その中で、新たな細菌感染の治療法として注目されているのが「PDT」だ。
同治療法では、光感受性物質を投与して、それを標的となる組織に集積させた後に、特定の波長の光を照射することで生じる活性酸素で標的細胞(細菌)を死滅させる治療を行う。
既存の抗菌薬の治療と全く異なる作用機序で殺菌を行うことで、問題となる耐性菌を生じる事がないという特徴がある。
大阪市立大学は3月9日、鶴田大輔氏(同大大学院医学研究科教授)、小澤俊幸氏(同講師)らの研究グループとSBIファーマ株式会社が共同で行った研究から、緑膿菌感染皮膚潰瘍に対して、「ALA(5-アミノレブリン酸)」の局所投与と「PDT(LED光を用いた光線力学療法)」を行い、緑膿菌を殺菌し、細菌感染していない場合と同等の創傷治癒促進効果を得ることに成功したと発表した。
同研究成果は、皮膚科学専門誌「Journal of Dermatological Science」(電子版)に掲載されている。
『感染皮膚潰瘍』は、入院患者や抵抗力の弱い人にとっては、大きな脅威となるものだ。
その二大要因となっているのが、耐性菌の代表で、グラム陽性球菌である「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」と、グラム陰性杆菌の「緑膿菌」だ。
「緑膿菌」は、水まわりなど生活環境中にも広く常在している菌だが、健常者には通常、病原性を示さない弱毒細菌だ。一方で、この「緑膿菌」には、各種の抗菌薬に耐性を示す傾向があることが分かっており、日和見感染症の起因細菌として臨床現場で問題となっている。
研究グループは2014年に、「MRSA」の感染皮膚潰瘍に対し、ALA(5-アミノレブリン酸)とPTD(410nm LEDを使用)が、殺菌および創傷治癒促進効果を有することを報告していた。
今回、同研究グループでは、PDTは「MRSA」と同様、薬剤耐性化が問題となっている「緑膿菌」にもが有効なのか検討。
研究当初では、緑膿菌に対してもMRSA同様の方法でPDTを行っていたが、効果が見られなかった。そこで条件を再検討し、少量の「EDTA-2Na(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)」をALAに混ぜてPDTを実施。
再検討後の研究の結果、『緑膿菌感染皮膚潰瘍』においても、緑膿菌が減菌し、MRSA感染皮膚潰瘍に対する効果と同様に、有意に創傷治癒が促進され、感染していない潰瘍と同等の治癒効果を得ることに成功したという。
今後は、2018年3月から、同大学医学研究科皮膚病態学の臨床研究として、人を対象に治療開始する予定となっている。
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